環境・エネルギー業界動向

最終更新日:2021/03/10

環境・エネルギーの定義

市場規模

21.4兆円

(前年比 4.4%増)

業界シェア

業界分析

数ある再生可能エネルギーの中でも、太陽光発電は国の補助制度などが充実しており、現在急速に普及が進んでいる。実際、2017年度の国内の全発電量のうち5.9%を太陽光発電が占めており、電力需要に対する太陽光発電の割合は世界で5番目に高い値となっている。

2012年7月に政府による再生エネルギーの固定価格買取制度(FIT)などの支援策が導入されたことにより、太陽光関連市場は急速に拡大した。しかし、新規参入する事業者の増加による競争激化や、買取価格の大幅な引き下げにより、多くの中小事業者にとって厳しい状況となった。FIT制度*1の抜本的改革に向けた議論も進められていることから、今後の新規認定の場合には、制度導入当初よりも収益性は下がる傾向にある。2019年現在、同市場は、新規参入も少なく成熟期に入ったと考えられる。

太陽光関連事業は、大きく3つに分けられ、それぞれ動向が異なる。 売電事業者、施工業者、管理メンテナンス業者(以下、O&M業者という)の3つである。
売電事業者では、大手電力会社や新電力など様々なプレイヤーがしのぎを削っている。 競争が激化しており、高圧分野では、価格競争に負けた新電力が大手の取次になるといったケースもみられる。 また、国としても価格低下を促す取り組みを強化している。 2017年度から改正FIT法の買取価格決定において、2MW以上の太陽光発電施設を対象に入札を導入している。安い価格で入札した事業者順に落札者が決まっていく仕組みのため、国は競争原理により、調達コストを低下させることを狙いとしている。 また、設備を持たない事業者は設備工事を行い、発電を行わなければ認可が取り消されると規定された。そのため、設備投資を行う余裕がない会社は制度変更への対応が難しくなった。 さらに、メンテナンスを含む事業計画書の提出が必要となったため、メンテナンスを行ってこなかった中小事業者にとっては大きな負担となった。 今後は買取価格がさらに下がり、新規参入業者は減るため、M&Aによる業界再編が起こることが予想される。実際、M&Aが活発な業界であり、数十MWの巨大な発電能力を持つ施設が人気となっている。
施工業者は、かなり厳しい状況に置かれている。 太陽光発電業界全体の倒産件数は88件(2018年)にのぼり2009年の8倍である。 ほとんどが施工会社の倒産と推察される。FIT法施行による急激な普及で一気に施工案件が増加したものの、需要が落ち着いた現在経営は厳しい状態にある。また、FIT法で一気に増加した事業者が熾烈な価格競争を引き起こしており、受注単価の下落を引き起こしている。
O&M業者は、経営は比較的安定している。 2017年に改正FIT法が施行されO&Mが義務化されたためである。しかし、O&M専業の会社は少なく、施工業者を母体に持つような会社が多い。したがって、本業の不振を受けたO&M業者が、倒産するリスクは避けられない。
蓄電池は太陽光発電システムにより発電した電気をためておくための装置であるが、家庭で導入するにはあまりに高額という難点があった。そんな中、2019年5月に蓄電池購入に際する補助金が新規導入され、早くも申し込みが殺到しているという。 新設・既設問わず、10kW未満の太陽光発電設置者の蓄電池の購入に際して最大60万円の補助金を交付するというものだ。これを機に家庭での導入が進むと予測される。

*1FIT制度 再生可能エネルギーの固定価格買取制度。太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスの再生可能エネルギー源を用いて発電された電気を、国が定める価格で一定期間電気事業者が買い取ることを義務付ける制度。

M&A動向

競争激化や法律改正による収益の悪化、市場全体の縮小などを背景にM&Aの件数は増加傾向にある。売電事業者にとっては、FIT法の改正により売電権利だけを持つ会社やメンテナンスを行わない会社が存続できなくなるため、M&Aによる譲渡ニーズが高まっている。
新たに発電するための設備投資やメンテナンス事業を開始することは、中小事業者にとって大きな負担であり、M&Aにより売電事業を譲渡する事例が多く見られる。譲受側にとっても市場の価格よりも高い固定価格で電気を売却できる権利は魅力的であり、売電事業者の譲受けニーズは高いといえる。
太陽光発電業界における動向として、同業企業同士のM&Aとテクノロジーベンチャーへの資本参加(買収)がある。
同業同士のM&Aではジー・スリーホールディングス(東京都品川区)が太陽光発電事業の永九能源(東京都新宿区)を買収した事例がある。 同社はGESジャパン福津太陽光発電所(認定許容5000kw、売電価格40円/kw)を保有している。注視するべきは売電価格が現在の約2倍の点である。FIT制度の買取価格が下落しているため、高い売電価格の権利を保有する企業は買いニーズが大きい。
また、2017年3月、ソフトバンクグループのSBエナジー株式会社と、三菱UFJリース株式会社の子会社であるMULエナジーインベストメント株式会社が、総合商社の丸紅株式会社より、とまこまい勇払メガソーラー株式会社の全株式を取得した。とまこまい勇払メガソーラー株式会社 が運営する とまこまい勇払メガソーラー は、北海道苫小牧市において2015年10月に運転を開始しており、出力規模が約2万9,800kW、年間予想発電量が約3,200万kWh/年を見込むメガソーラー発電所である。FITの買取価格が下がり続ける中で、既に認可を得て一定の発電実績がある発電所を譲受けることで、安定的な収益の確保が見込めると見られている。
テクノロジーベンチャーへの資本参加の事例では、関西電力(大阪府)が2017年6月1日にバイオマス発電事業のバンブーエナジー(熊本県南関町)の株式を10%取得し資本参加した。バンブーエナジーは、2019年1月から稼働する予定の竹を活用したバイオマス熱電供給事業を手掛けている。関西電力は同事業の知見とノウハウを獲得する。両企業は2030年までに50万キロワット程度の再生可能エネルギー電源の開発を目指すとしている。

企業価値の目安

太陽光発電業界に関しての企業価値の計算方法は、譲渡企業会社が売電業者施行事業者、O&M事業者かによって異なるため一概にEV/EBITDA等の指標で比較評価することが難しい。しかし、太陽光発電は発電量に変動が少なく、売値も固定価格買取制度の適応で変動がないため将来の収益をかなり正確に判別できる。そのため単純にそこから想定されるコストを差し引けば企業価値を算出することが可能となる。