IT/ソフトウェア/ウェブ業界動向

最終更新日:2020/10/10

IT/ソフトウェア/ウェブの定義

市場規模

27.8兆円

(前年比 6.1%減)

業界シェア

  • 富士通
    3兆527億円
  • NTTデータ
    2兆1171億円
  • 日立製作所
    2兆89億円

業界分析

情報サービス業の売上高は増加傾向にある。(※経済産業省:特定サービス産業動態統計) 近年、IT業界では「IoT」や「Fintech」といった情報技術の進化が活発に行われているが、それに伴い、一般企業のソフトウェア投資に対する考え方も変化。多種多様な業界でITへの投資が広がっており、今後も安定的した市場の成長が見込まれている。
ソフトウェア業界にはマイクロソフト・オラクルといった「パッケージソフト開発企業」や、アクセンチュア・野村総研のような「独立系」、他にも、ITホールディングスのような「コンサル系」多様な事業形態があるが、今回はSI(システムインテグレーター)業界について記述する。
SI(システムインテグレーター)とは、SI情報システムの企画、設計、運用などの業務をシステムのオーナーとなる顧客から一括して請け負う情報通信企業のことである。システムインテグレーターは主契約者として案件全体をマネジメントする役割を担っており、請け負った際の業務内容は幅広く、企業のシステム構築の企画・設計、開発、導入、運用の流れの全体に関わっている。

日本のシステム開発関連業界は複数の下請けから成るピラミッド構造システムとなっている。システム開発関連業界において、システムインテグレーターはピラミッドの頂点に位置しており、主契約者(元請け:プライムコントラクター)として、企業から案件を受注する。請け負った案件は、副契約者(下請け:サブコントラクター)に作業工程を発注し、システムインテグレーターは全体のマネジメントを行う。
ピラミッド構造の一番下にはシステムエンジニアリングサービスと呼ばれる業者が位置し、プロジェクト単位で業務を請け負い、エンジニアを供給している。基本的には大企業が元請けになることケースが多かったが、近年では2次請け以下を中心とする事業者が、直接顧客と契約を結ぶ場合も少なくない。総務省によって2009年頃からはシステム開発などの再委託を適正化する動きがあり、大企業を中心に3次請け以下を活用しないような自主規制が行われている。

システムインテグレーター業界は、企業のIT投資動向による影響を受けやすく、受注の増減や不採算プロジェクトの発生などのリスクも抱えている。また、人件費負担が大きく利益を上げにくい構造となっているため、受注案件に対する各種サービス部門の強化が、収益を安定させる鍵になるといえる。
近年では、自らデータセンターを保有して顧客企業のデータ管理を行ったり、運用中のサポートサービスを開始するなど、継続的な収益を目的とした、ストック型ビジネスを強化させている企業が増加している。

少子高齢化による人材不足の対策として、IT関連業界はASEAN諸国などを中心に、低コストで海外の企業や子会社へ、システム開発の委託する、オフショア開発を進めてきた。しかしながら、オフショア開発の普及が、先進国企業のサービス価格を低下させる圧力となり、日本を含む先進国企業のシェアを新興国企業が奪う事態が発生している。

M&A動向

ソフトウェア開発業界において、中小企業によるM&Aが活発化している。理由としては、「国内企業のソフトウェア投資に対する考え方が改善傾向にあること」、「技術者の人材不足」、「下請け企業の統廃合」などが挙げられる。
政府による経済対策や金融緩和、好景気の影響により、企業のソフトウェア投資に対する考え方は改善傾向にあり、クラウドやIoT、ビッグデータを中心にIT投資が行われる動きが見え始めている。それに伴って、ソフトウェア開発業界では、M&Aを行うことで自社にない技術や機能を補完。事業内容や規模をを拡大しようという狙いがある。
IT業界は技術者の深刻な人材不足を抱えており、ソフトウェア開発業界も例外ではない。大企業を中心に優秀な人材を確保しようと、M&Aを活用する動きもみられる。 下請け企業の統廃合については、下請け企業は単独での成長が難しい企業も多く、大手の傘下に入る。同業と資本業務提携することが事業規模拡大の一つの選択肢となっているのである。

2018年10月にはクレスコ(東京都)がアルス(東京都)の全株式を取得し、子会社化。パッケージソフトウェア開発事業を取り込むことにより、クレスコグループにおける企業価値の向上を図った。クレスコとは複合IT企業。子会社10社を持ち、情報システムのコンサルティング、設計、開発、運用管理、保守を行う。アルス(東京都)とはパッケージソフトウェア開発会社である。
NTTデータ(東京都)は積極的なM&Aにより海外事業展開を加速させている企業の一つで、2016年、北米事業子会社の統括を行う米国企業であるNTT Data International社が、クラウドサービスやアプリケーション関連サービス、ビジネスプロセス・アウトソーシング(BPO)サービスを展開する企業であるDell Services部門の子会社3社を子会社化するとともに、ITサービス関連事業を譲り受けた。最先端の技術を活用したサービスの強化を目指したM&Aのケースで株式取得価格と事業譲り受け価格の総額は30億5,500万ドル(当時の価格は約3,465億円)である。また、同社の2016年以降の主なクロスボーダーは14件に達する。
積極的なM&Aにより、2018年3月期の営業利益は前期比5.5%増の1,235億円となっている。売上高は2兆1,171億円(前期比22.2%増)に達した。

企業価値の目安

ソフトウェア開発業界は財務構造上、固定費の占める割合が高く、労働集約的なビジネスである。 業務用パッケージソフトはシェアの大半を外国製が占めており、国内企業は市場で厳しい競争を続けている。
近年はパッケージソフトよりもクラウドへのサービス提供に注力している事業者が多く、企業価値の目安としてはクラウド技術を持っていない企業ほど、市場価値が低く、Fintech、Big Data、AI、IoT、Data Analytics、AR/VRなどの先進技術を有している企業の市場価値が高まっている。
ソフトウェア業界の企業価値を判断する際には、簿価上の資産だけを評価するのではなく、SEやプログラマーのスキルレベルなどの人材面にも目を向ける必要がある。