ドラッグストア業界動向

最終更新日:2021/03/10

ドラッグストアの定義

ドラッグストア業界とは、主として医薬品、化粧品を中心とした健康および美容に関する各種商品を中心として、家庭用品、加工食品などの最寄品をセルフサービス方式によって小売する事業所をいう。

市場規模

7.6兆円

(前年比 8.7%増)

業界シェア

  • ウエルシアHD
    8682億
  • ツルハHD
    8410億
  • コスモス薬品
    6844億

業界分析

ドラッグストア業界の市場動向は、約20年間で大きく変化し続けてきた。市場規模は年々拡大しており、2018年のドラッグストア販売額は、6兆3,644億円、前年比にして5.9%増(経済産業省「商業動態統計」)となった。販売額の増加要因としては、「食品」の販売額が1兆8,061億円と前年比にして9.5%増加していることが主な要因といえる。続いて、「化粧品」や「健康食品」など、ビューティーケア商品の売り上げも前年比6.6%と伸びているのが特徴だ。食品や日用品を格安価格で販売し、医薬品や化粧品で稼ぐビジネスモデルで、スーパーマーケットとの競争を激化させている。市場規模の拡大に合わせて、大手ドラッグストア企業は低価格や、営業時間の拡大など利便性の向上に加え、新規出店やプライベートブランドの開発などにより成長してきた。
2009年6月の薬事法改正で医薬品販売規制が緩和され、医師の処方箋を必要としない一般用医薬品がコンビニなどでも販売されるようになった。そのため、今までの「ナショナル・ブランド商品を格安で販売して集客し、医薬品で利益を得る」従来モデルが通用しなくなってきている。大手流通企業や、大手チェーングループに参加・統合し、ナショナル・ブランドに代えて収益率の高いプライベートブランド商品を取り扱うことにより、高い収益率の確保や更なる新規出店が可能となる。
また2013年12月には医薬品の販売ルールが大幅に緩和され、一般用医薬品の中でも薬剤師による対面販売が義務付けられていた第一類医薬品、第二類医薬品のインターネット販売が可能となった。これにより参入障壁が低くなり、異業種の参入も増える傾向にある。
さらに2017年1月からは、スイッチOTC医薬品を1万2,000円以上購入すると税制の優遇が受けられるという制度がスタート。 ドラッグストアの成長の背景にはこのような制度変更が大きく関係している。
しかし、薬事法の改正やドラッグストア数の飽和など業界動向の変化により、近年はドラッグストア市場の伸びが鈍化している。成長が鈍化し始め、好条件の新規出店場所も限られてきたことから、各大手ドラッグストア企業は、M&Aによるシェア拡大戦略を積極的に行うようになった。一方、中小ドラッグストア企業は、成長の鈍化により業績が厳しくなっていることから、M&Aによる売却・譲渡が増加している。そのためドラッグストアの店舗数は増加するも、企業数は減少傾向にあり、大手チェーンの台頭による店舗の大規模化、集約化が行われている。
ドラッグストア業界ではコンビニエンスストア業界と同じく、大手各社が地域を絞って集中的に出店するドミナント戦略が一般化している。営業エリアに店舗を複数配置し他社の参入を妨げることで市場占有率を高めるドミナント戦略を、他社に先駆けて進めているため、M&Aによるエリア拡大競争が激しくなっている。また、ドミナント戦略で他社に差を付けるには業界シェアの確保が必須であるため、大手ドラッグストア同士での業務提携などにより業界順位の上昇を狙う事例も増加している。 また、ドラッグストア業界が抱える問題として、深刻な薬剤師不足がある。薬剤師法により、薬剤師1人当たりが出せる処方箋の枚数の限定があり薬剤師を確保する必要性があることから、調剤薬局等の大手事業者は薬剤師の確保を積極的に行っている。そのため、調剤部門では専業チェーンなどと薬剤師の取り合いになっており、人件費高騰が追い打ちをかけている。

M&A動向

ドラッグストア業界では近年、グループ上位企業が下位企業の取り込みや、進出エリアを拡大する地域補完型のM&Aを積極的に行っている。また、中国、台湾などアジア市場の開拓に乗り出す動きも目立っている。
中小規模のドラッグストアは単独資本経営からM&A等による大手ドラッグストアチェーンの傘下に入ることで事業再生を行う企業が増加傾向である。また、M&A等により大手企業グループに参加することで、プライベート商品の共同開発や共同仕入れによる収益力の向上や経営手法の共有による事業基盤の長期的な拡大が可能となる。そのためこれらの取り組みを推進する企業も増えている。
先述したようにドラッグストア業界は積極的なM&A戦略で大手による寡占化が進んでいる。特に勢力を上げているのが「マツモトキヨシグループ」(マツモトキヨシなど)、イオン系列の「ハピコム」(ツルハドラッグ、ウエルシア薬局、くすりの福太郎など)、「WINグループ」(ココカラファイン、コクミンなど)の3大グループである。
2019年8月、ドラッグストアチェーン大手のココカラファインとマツモトキヨシは、経営統合に向けた協議を開始する覚書を締結した。ココカラファインとマツモトキヨシHDが経営統合すると売上高は1兆円を超え、首位争いが激しいドラッグストア業界でトップに立つことになる。 さらに2019年ココカラファインは、東京都の調剤薬局である小石川薬局1店舗を、株式譲渡により子会社化した。ココカラファインは、M&Aによるドラッグストアと調剤薬局の取得を進めており、小石川薬局を取得することで、東京都新宿区商圏での市場占有率を高めている。
ウエルシアHDは2019年、岡山県内でドラッグストアと調剤薬局を展開する金光薬品を、株式譲渡により子会社化した。ウエルシアHDは、全国でドラッグストアの新規出店とM&Aを進めており、金光薬品を取得したことで岡山県と中国地方での店舗網を強化している。

2019年、ツルハHDは連結子会社のツルハをつうじて、秋田県大潟村のおおがたむら調剤薬局を株式譲渡により子会社化した。これにより、ツルハHDは大潟村で唯一の調剤薬局を取得し、同地域ですべてのシェアを獲得している。
2009年6月の薬事法改正で以降、異業種とのM&Aにより、コンビニエンスストアが持つ利便性や、ECサイトによる直販モデルの強化等を主事業に取り入れることで事業の拡大を図る企業もある。 その例としては、2009年8月にマツモトキヨシホールディングス(HD)がローソンと、2009年12月にココカラファインがサークルKサンクス(2016年にファミリーマートと統合)と業務提携を行った。ツルハホールディングス(HD)は、2010年にポプラと業務提携を締結、2011年9月に解消したが、2015年2月にはローソンと業務提携した。 今後、ドラッグストア業界は健康の促進も推奨しているため、地域におけるヘルスケアネットワークの構築も推進したM&A取引も増加することが見込まれる。

企業価値の目安

地域密着型のドラッグストアがM&Aを進める場合、売上・利益、資産内容など財務面に加え、エリア、在庫を管理している情報システム、資格の有無などの従業員の構成も重要な検討項目である。 EV/EBITDA倍率は11社平均で13.03倍であり、分布としては12~14倍が3社、10~12倍が2社、6~8倍が2社となっている。