役員などの従業員に会社を引き継がせることを従業員承継と言います。後継者不足が叫ばれる中、親族内承継が困難な場合に検討されることの多い方法です。
親族内承継との大きな違いは、育成にかかる時間や株式譲渡の有無、多くの人材の中から選択できるか、などです。
いざ実際に、従業員承継を考えると、さまざまな課題が見えてきます。今回は、従業員承継をおこなう際の注意点、方法などをご紹介します。
従業員承継の注意点
ここでは、従業員承継をおこなう際の注意点を考えてみましょう。
候補者を選定する
従業員承継には、候補者の選定が必要です。挙げられる候補者としては下のような人がいらっしゃいます。
共同経営者
現経営者とともに共同で経営に参画している人であれば、事業承継もスムーズです。ただし、現経営者と年齢がさほど変わらない場合は、後継者として適任ではないかもしれません。
役員
現経営者よりも若くて、会社について把握している専務や常務などの役員であれば適任です。
役員が複数いる場合は、役員間で争いとならないように、それぞれの気持ちに配慮しながら、人選を進めていきましょう。
優秀な若手社員
若手社員がいる場合、経営者として育成するのも良いでしょう。社内や取引先に認められる人柄なのか、コミュニケーション能力が高いなのか、など選ぶべきポイントを検討します。
本人の了承
従業員を後継者として考える時、当然承諾するだろうと思って、本人の了解を得ずに、承継を進めてしまうケースがあります。
経営者と従業員では立場や責任が大きく異なるので、実際に従業員に打診をしてみると断られる可能性があります。
承継を進めた中で断られると、費やした時間がムダとなってしまいます。
計画を狂わせないためにも、必ず事前に本人の了承を取っておきましょう。
後継者の教育をおこなう
従業員への承継の場合、場合によって経営者としての知識やスキルを十分に教育していく必要があります。
従業員承継の方法
従業員承継をおこなう時、下の3つの方法があります。
経営権だけを譲渡する
従業員の事業承継は、経営権の譲渡が最も重要です。これは、一般的には取締役会の決議などによって行われます。
代表取締役といった肩書および業務内容を引き継ぎます。
事前に後継者は、会社経営の知識、マネジメントなどを学んでおく必要があります。
また、社内への周知も前もっておこなうことも考えられます。
株式を贈与する
従業員承継において会社株式を譲り受けるのかどうか、これはさまざまなケースが考えられます。
後継者へ資金的な負担を抑える方法としては、この贈与、遺贈などがあります。
この方法であれば、株式買取にかかるコストを、ほぼゼロコストで行えるので、後継者にとってメリットの大きい方法と言えるでしょう。
贈与税などは発生しますが、後継者にとっては資金的メリットの大きい方法です。
ただし、株式の売却による益が発生しないため、リタイアによる資金が現経営者に入って来ないことになります。
現経営者にとってデメリットのある方法です。
対価を求める方法
会社株式を譲渡、売却する方法です。事業承継においてこちらの方法が一般的です。
この方法は、後継者が株式を買取る必要があるので、資金を調達しないといけません。ここに注意が必要です。
後継者の資金力だけでは買取が難しいケースがあります。その場合は、段階的に株式を買い取らせるという手法など、さまざまな対策を検討する必要があります。
まとめ
今回は、従業員承継をおこなう際の注意点、方法などをご紹介しました。
中小企業において、親族に会社を引き継がせたいが、親族内に後継者がいないことがよくあります。
そういう場合の選択肢として、従業員承継や、第三者による承継、M&A承継などがあります。
もし社内に事業を引き継いで欲しい人材がいる場合、上のような注意点をふまえ、慎重に選択肢を検討していきましょう。