親族内承継がうまくいかず、親族内に後継者が見つからない場合、次の手として、従業員承継が挙げられます。
今回は、従業員承継のメリット、デメリットについて解説します。
親族内承継との違い
親族内承継との違いは、どういったものがあるのでしょうか。
会社に一番くわしい人材を選べる
経営者が会社に一番詳しいと考える人材を選ぶことができます。社内の人材から、必要と思われる人材を、ある程度自由に選べるので、安心して承継できます。
育成の時間を短縮できる
ある程度の実績を残してきた人材を選べるので、育成の時間が短縮できます。
従業員承継とは?
従業員承継とは、子どもに継がせる親族内承継ではなく、会社の従業員に承継する方法です。
子どもが事業を継ぎたがらないケースもあり、適切な後継者が見当たらない場合にも検討されます。
最近では、従業員承継は、親族内承継の次に多くなっています。
従業員承継は、従業員に継いでもらう方法ですので、会社のことをよく知っている人が経営者となります。
元経営者にとって安心感がありますし、社内の反発も少ないと予想されるので、スムーズに進む可能性があります。
従業員承継は増えています
事業承継の中で最も多いのが親族内承継だと言われています。次に多いのが「従業員承継」です。
従業員承継は、非常に多くなっているのがデータでも出ています。
このように近年注目されているのが、従業員承継です。
従業員承継のメリット
ここでは、従業員承継のメリットをご紹介します。
会社に詳しい人材に承継できる
従業員承継のメリットの一つは、経営者が一緒に仕事をしてきた人から選べるという点にあります。
経営者が必要だと思われる人材から選ぶことができます。ある程度の実績を残している人を選べるので、育成の時間も短縮できます。
企業文化を引き継げる
役員や従業員の事業承継であれば、会社のことはよく知っています。企業理念や社内風土も理解しています。
そのため、企業文化もスムーズに引き継ぐことができます。
社内や取引先からの理解を得やすい
事業承継で社長が交代する場合、社内や取引先へ一定の理解が必要です。
従業員や取引先から不信があると、安定的な経営に支障が出る可能性があります。
従業員承継であれば、周囲からの理解も得やすいでしょう。
能力のある後継者が選べる
従業員の中から長い時間をかけて選べるので、後継者の能力不足というのは、ほぼ無くなります。
生え抜きの社員が役員まで上り詰めた場合、一定の経営手腕が期待できるのではないでしょうか。
会社のすべてを知っている人の引き継ぐことができます。
従業員承継のデメリット
ここでは、従業員承継のデメリットをご紹介します。
資金がない
従業員に対して事業承継をおこなう際、オーナーである現経営者から、自社の株式を譲るケースがあります。
その場合、次の経営者に対価を支払ってもらわないといけません。
しかし、株式を譲り受けるための資金を持っていないことがあります。その場合、承継できる人は、十分に支払いができる人という条件が加わり、候補者がいなくなってしまうケースがあります。
対価を減額すれば、話は進みますが、リタイア後の資金が減ってしまうので、事業承継するメリットも小さくなってしまうというわけです。
会社が発展しにくい
従業員承継の場合、社内の従業員が引き継ぐわけですから、社内風土や企業文化をそのまま引き継ぐというメリットがあります。
一方で、会社が抜本的に変わることが難しいという結論になります。
経営者が変わるのは、世代交代というメリットでもあります。このタイミングを逃すと、会社の変革を逃すということにつながります。
M&Aによる事業承継を想定すると、買い手企業とのシナジー効果によって、これまでの会社とは大きく異なる文化、事業規模を形成することも可能です。
従業員が承継した場合、思い切った改革に着手することは困難です。どうしても、これまでどおりの経営パターンを引き継ぐようになります。
これがデメリットの一つです。
派閥争いにつながる可能性
従業員承継のメリットは、会社の中で優秀な人材を選ぶことができる点にあります。
しかし、より若い社員を選んだ場合、それによって年功序列を崩すことにもつながります。
また事前に話し合いを重ねておかないと、役員同士の後継者争いとなり、派閥争いにつながる恐れがあります。それらについて、配慮しないといけません。
まとめ
今回は、従業員承継のメリット、デメリットについて解説します。
従業員承継を検討する際は、メリット、デメリットの両方があるので、それらをしっかりと把握して、じっくり検討するのが成功への近道です。
円滑な承継がおこなわれて、永続的な企業発展につながるよう、常に気を配っていくことが大切です。