事業承継補助金は、事業承継にかかる経費の一部に対して補助される制度のことです。今回は、事業承継補助金の具体的な内容や申請手続きについて解説していきます。また、実際に事業承継補助金が交付された場合に必要な対応にも触れます。
事業承継補助金とは?
事業承継補助金は、その名の通り事業承継の際に必要な費用の一部を補助する制度です。ここでは、事業承継補助金の目的と具体的な内容について解説します。
事業承継補助金の目的
事業承継補助金とは、事業承継の際に新たな取り組みをする承継者を支援することを目的とした補助制度です。近年では後継者不足を背景とした負債などから、中小企業がM&Aや事業承継を行うケースが増加しています。
事業承継には多くのリスクが伴いますが、事業承継補助金ではこのようなリスクがあっても積極的に会社や事業を存続させようと考える承継者を応援する制度です。事業承継補助金は毎年度公募があり、令和元年度補正予算で組まれ、令和2年6月で公募を終了していますが、来年度も実施されることが予想されます。
事業承継補助金の内容
事業承継補助金には、Ⅰ型の「後継者承継支援型」とⅡ型の「事業再編・事業統合支援型」の2つのメニューが用意されています。
Ⅰ型の「後継者承継支援型」では、事業承継をする際に経営者交代で新た取組を行う場合、取組に要する経費の一部を補助するメニューです。事業承継補助金の上限額は小規模事業者で200万円・補助率2/3、小規模事業者以外の事業者は150万円・補助率1/2と定められています。事業承継に当たって事業所の廃止や事業の集約・廃止が発生する場合、廃業費用として上限額300万円までが上乗せされます。
一方、Ⅱ型の「事業再編・事業統合支援型」は、M&Aによって新たな取組を行う場合に経費の一部が補助されます。具体的には、合併、会社分割、事業譲渡、株式交換・株式移転、株式譲渡などを行った際にこのメニューに該当します。Ⅱ型の補助上限額は審査によって上位とそれ以外に振り分けられ決定されます。上位は上限額600万円・補助率2/3、上位以外は上限額450万円・補助率1/2となっています。
事業承継補助金の対象者
事業承継補助金の対象者要件に該当するためには、以下の7つの要点を満たし、かつ「事業承継の要件」を満たす必要があります。
①日本国内で事業を営む者であること
②地域経済に貢献していること
③暴力団等の反社会的勢力でないこと、出資金等の資金提供を受けていないこと
④法令順守上の問題を抱えていないこと
⑤経済産業省から補助金指定停止措置が講じられていないこと
⑥匿名性を確保しつつ公表される場合があることに同意すること
⑦補助事業の調査やアンケート等に協力できること
また、事業承継補助金の公式サイトでは、「中小企業」の基準を中小企業基本法第2条に準じていることが明記されています。
事業承継補助金の申請手続き
ここでは、事業承継補助金の申請書をメニューごとに紹介していきます。
事業承継補助金の申請に必要な書類
補助金は応募段階で必ず申請書類を提出する必要があります。法人の規模や形態によって必要な書類が変わるため、該当する条件を確認しておきましょう。
法人 | 履歴事項全部証明書(ただし発行から3か月以内のもの) 直近事業年度の決算書(貸借対照表・損益計算書) 事業承継後の場合、役員変更の官報公告もしくは役員等の専任決議の議事録 |
個人事業主 | 税務署の受領印が押印された確定申告書B 所得税青色申告決算書の写し |
特定非営利活動法人 | 直近事業年度の確定申告書 直近事業年度の決算書(貸借対照表 損益計算書)・履歴事項全部証明書(発行から3ヶ月以内) 定款 |
議事録は専門家とのやり取りが把握できる客観的資料でもあります。議事録には可能な範囲で助言内容などを記載しておきましょう。また、事業承継後の申請も可能ですが、役員が変わった際には国の機関紙である官報への公告も必要です。
また、条件によっては、補足説明資料、住民票、認定経営革新等支援機関による確認書、申請資格を有していることを証明する後継者の書類、承継に関する書類、公募要領の加点事由に該当する書類などが必要になることもあります。
Ⅰ型「後継者支援型」の申請に必要な書類
Ⅰ型「後継者支援型」の申請に必要な書類は、以下の4つが挙げられます。
- 後継者(承継者)の証明書類
- 税務署の受領印が押印された確定申告書B・所得税青色申告決算書の写し(個人事業主の場合)
- 履歴事項全部証明書(発行から3ヶ月以内)・直近事業年度の決算書(貸借対照表・損益計算書)(法人の場合)
- 直近事業年度の確定申告書・直近事業年度の決算書(貸借対照表・損益計算書)・履歴事項全部証明書(発行から3ヶ月以内)(特定非営利活動法人の場合)
後継者の証明書類は、後継者が申請資格を有していることを証明する書類ということです。
Ⅰ型「事業再編・事業統合支援型」の申請に必要な書類
Ⅰ型「事業再編・事業統合支援型」の申請に必要な書類としては、以下の4つが挙げられます。
- 条件を満たしたこと示す書類
- 履歴事項全部証明書(発行から3ヶ月以内)・直近事業年度の決算書(貸借対照表・損益計算書)(法人の場合)
- 直近事業年度の確定申告書・直近事業年度の決算書(貸借対照表・損益計算書)・履歴事項全部証明書(発行から3ヶ月以内)(特定非営利活動法人の場合)
- 経営計画書の認定書
事業承継補助金のチェックポイント
ここでは、事業承継補助金の申請時に必要なことや交付事例、注意すべき点などをご紹介します。
事業承継補助金の申請に必要なタスク
補助金は助成金と比べても申請や審査に時間がかかることが多いため、事前の準備が必要不可欠です。具体的な流れと各時点でやるべきことは、以下の通りです。
交付申請時 | 事業承継補助金事務局に交付申請を提出 郵送、電子申請どちらも可能 申請マイページから合否の結果が通知される |
交付決定時 | 採択となっても補助金の交付はまだ先 新たな取組をしたことを報告する |
決定後の手続き | 取組が完了したら申請手続き 補助金の交付が行われる 交付後5年間は事業化状況報告などの提出が義務付けられる |
事業承継補助金の事例集
事業承継補助金の公式ホームページには、補助金を活用した企業の事例紹介が掲載されています。
例えば、【Ⅰ型】の「後継者承継支援型」を活用した金沢建具工房株式会社の事例では、設備費として以下の費用に対する補助を受けています。
・ショールーム新設工事費
・来客者用駐車場整備工事費
・工場用集塵機導入費
新たな取組の標題 | 建具製造の匠の技を用いたオリジナル建具 |
業種 | 建設業 |
資本金 | 20,000万円 |
従業員数 | 6名 |
承継者との関係 | その他の親族外 |
このように、事業承継補助金は小規模な事業であっても恩恵を受けることができます。
事業承継補助金申請の注意点
補助金は性質上後払いの性格を持っています。つまり、事業を行っている最中はお金を自分たちで工面する必要があります。キャッシュの不足がないように、補助金の交付までの時差も考慮しておく必要があります。
また、補助金は交付後も報告義務が残るため、手続きが煩雑で社内の事務が増加します。申請、交付後の事務作業も考慮した体制を整えておく必要があります。
事業承継補助金は新たな取り組みや事業の発展に資する内容である必要があります。補助金の中では採択率も高く審査はそれほど厳しい方ではありませんが、要件を満たしているかチェックしておく必要があるでしょう。
事業承継補助金は承継者にとって心強い制度
事業承継補助金は、最大で1200万円まで交付を受けることができる、リスクのある承継の際に嬉しい制度です。交付申請や手続きにやや時間を要する点、要件を複数満たす必要がある点でハードルはやや高くなりますが、不安定で先行きの見えない事業をする際には心強い味方となるはずです。事業承継を控えているという会社であれば、あらかじめ申請を検討しておきましょう。
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