TOBとは、日本語で「株式公開買付」と言い、株式取引市場外で定められたルールの中で対象企業の株式を買い集める方法のことです。今回は、TOBの具体的な方法、TOBのメリットやデメリット、株価への影響などを解説します。また、TOBの注意点についてもあわせて解説していきます。
TOB(株式公開買付)の概要
TOBは「Take Over Bid」の略称です。Take overとは企業の取得のことを指し、Bidは入札のことを指します。つまり、「Take Over Bid」とは、入札によって企業の取得、いわゆる株式公開買付で企業を買収するという意味を持っています。TOB(株式公開買付)は、相手企業の買収を望む企業、関連会社や子会社に対する支配権を高めようとする企業が、相手企業の株式を市場外で購入する方法のことです。
TOBは、市場内で株式を購入するよりも、少ない資金で多くの株式を購入しやすい方法ですが、一定の法令で定められたルール内で購入する必要があります。また、TOBは会社同士の関係によって、「友好的TOB」や「敵対的TOB」と呼ばれることもあります。
友好的TOBとは、文字通り買収側の提案に買収される側が同意することで実施されるTOBのことを指します。日本国内で実施されるTOBは、ほとんどが友好的TOBだと言われています。一方で、敵対的TOBとは、買収企業の提案を買収される企業が受け入れなかった場合のTOBのことを指します。敵対的TOBの多くは、買収される企業は敵対企業に対して買収されないように防衛策を実施します。
日本では、企業同士の「株式持合い」を解消することが増えたり、日本の企業体質によって割安な企業が表れたことで、外資系投資ファンドから敵対的TOBが急増した時期があります。これらの背景によって、日本でも敵対的TOBが話題になりました。
TOB(株式公開買付)の目的とは?
企業がTOBを行う理由には、①経営の実権を握る目的、②自社株を買い集める目的、の2つがあげられます。
①経営の実権を握る目的
TOBは、相手企業の経営権を取得するための手段として、TOBを選択されることがあります。
経営権を得たいという動機は、企業によってさまざまです。事業のシナジーを得得て競争力を高めるためであったり、経営を改善して株価を上げ、売却益を得たいという目的で経営権を取得するケースもあります。BOTを行うシーンでは、相手企業に対する影響力は、持ち株比率によって変化します。
持ち株比率が3分の1を超えた場合、企業の重要な決定に関して拒否権を得ることができるため、企業間の場合、相手企業は関連会社となります。また、持ち株比率が2分の1を超えた場合は、相手企業は子会社となります。この場合、重要事項以外の決定権を得ることができます。さらに、持ち株比率が3分の2を超えた場合は、企業経営に関する重要な事項に対して決定を行うことが可能になります。持ち株比率が100%達すると、相手企業は完全子会社扱いになり、すべての決定権を自社が取得することができます。
②自社株を買い集める目的
TOBは他社の経営権を得るという目的以外にも、自社株を集めるために行われることがあります。
なぜ自社株を買い集めるのかというと、自社の上場を廃止するためであったり、他社からの買収を防止するため、1株あたりの価値を高めるためなどの目的があるからです。ただし、自社株買いには法律によって規制が設けられており、必ずしも思い通りに行えるとは限りません。
TOB(株式公開買付)のメリット
TOBは買収側、売却側ともにメリットがある手法です。両者それぞれの視点でメリットを解説します。
買収側のメリット
買収側のメリットは主に4つほど考えられます。
- 買収成立までの進捗を管理しやすい
- 手間がかからない
- 株価の変動による影響を受けにくい
- 予定株式を取得できない場合はキャンセルが可能
まず、売買成立までの進捗管理についてですが、市場から株式を買い集める場合、目標株式数を買うまでどのくらいの期間を要するのか予測が困難です。一方、TOBの場合は期間限定で購入を行うため、スケジュールの管理が容易です。
次に、手間がかからない点ですが、TOBは株式譲渡や事業譲渡などの手法をとるM&Aに比べ、手続きが簡素で時間や労力のコストを少なくすることが可能です。買収の決定に際して株主総会を経る必要はなく、買収先企業の従業員と再度契約を結ぶ必要もありません。
また、TOBは価格を決めて株式を買い取る手法のため、市場の株価によって想定外の資金が流出してしまうリスクもありません。ただし、TOBを行う相手が他にもいた場合は、TOB価格そのものを吊り上げるような状況になることもあります。
最後に、予定株式数に達しなかった場合は、TOB自体キャンセルできます。市場で株式を買い集めると、目標株式数に達しなくても買い集めた株式は手元に残ってしまいますが、TOBであれば全株式をキャンセルできるため、中途半端な株式が残り困ることはありません。
売却側のメリット
売却側のメリットとしては、主に2つの点から解説します。
- 大きなリターンが得られやすい
- 株価の変動による影響がない
TOBでは、株価に2~5割程度のプレミア価格が上乗せされて募集します。そのため、買収される側の企業の株主は、直近の相場よりも高い株式を売却することが可能です。ただし、売るタイミングなどは注意しなければならず、場合によっては機会損失になるリスクもあります。
また、TOBによって株式を売却する場合、TOB価格で株式が売却可能です。市場での売却のような株価の変動に影響されないことも大きなメリットです。状況によっては、買収企業がはじめのTOB価格からさらに価格を上げる可能性もあります。株主側は売却益を予測しやすいため、心配しなくてすみます。
TOB(株式公開買付)のデメリット
TOBはメリットが多い手法ですが、気を付けなければならないポイントもあります。こちらも買収側、売却側に分けて解説します。
買収側のデメリット
買収側のデメリットとしては、抵抗する企業などにより損な取引をされるリスクがあることです。買収先の企業が提案に応じない場合、それでもTOBを強行すると敵対的TOBになります。敵対的TOBを仕掛けると、買収先の企業はさまざまな買収に対する防衛策を講じてきます。その結果、買収自体には成功したとしても、想定外の買収資金を失ったり、企業価値が下がった状態で企業を買収しなければならないこともあります。敵対的TOBのリスクを理解して手続きをしましょう。
また、買い付けを公開する必要がある点もある種のデメリットと言えます。TOBでは株主平等の原則に基づいて、公開買付に関する情報を公開する義務があります。そのため、TOB関連の情報が多数の人の目に触れることになり、TOBの過程で生じたトラブルや紛争は企業イメージを損なう原因になります。
売却側のデメリット
敵対的TOBとなった場合、相手側は買収防衛策として、さまざまな対策を行います。防衛策の中には、買収される企業自身にも損失が生じるものもあり、衛策が成功しても株価が下がり、売り方やタイミングで株主が損をするケースが生じます。
また、防衛策が株主保護の観点に抵触し不当と判断されれば、差し止めによって防衛策自体が行えなくなります。このような場合は株価が下がり、売り方や売るタイミング次第で株主が損をするリスクがあります。
TOB(株式公開買付)による株価の影響
有効的なTOBになった場合、買収企業、買収される企業ともにメリットが大きいと判断されれば株価が上昇します。とはいえ、メリットが不明確でも、TOB価格に付随して一時的に株価が上昇するケースがほとんどです。
敵対的TOBであっても、買収理由に合理性があると判断されれば株価が上昇します。また、TOB価格とともに一時的に株価が上昇することがほとんどですが、買収される企業が買収を拒否する理由、防衛策が株主の利益を軽視、無視した内容だった場合、株価が下落する可能性もあります。
TOBはメリット・デメリットを考慮して手続きする
企業は経営の実権を握りたい、自社株を買い集めるたいなどの目的でTOBを行います。この際、TOBは主体によってそれぞれメリット、デメリットがあるため、後からトラブルにならないように事前に内容を把握しておく必要があります。
また、敵対的TOBの場合は、友好的なTOBよりも買収後に損失が出るリスクが多いため、事前に考慮しておきましょう。しかし、株価への影響に関しては、TOBのほとんどのケースで上昇要因となります。
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