今回は会社売却についての記事になります。会社売却を考えている経営者は多いはずです。まずは手続きやM&Aのプロセスを含めて確認していきましょう。
会社売却の提案
会社売却案件の提案する時は、M&Aの仲介のプロフェッショナルにコンタクトを取ることが重要になります。
実際にM&Aの仲介のプロフェッショナルをアドバイザーに選定すると、クライアントであるあなたと契約(Engagement Letter: EL) を交わし、アドバイザリー業務がスタートします。
会社売却を提案してから入札までの初期段階
会社売却を提案したら、ティーザー作成・配布などを行い、入札までの準備を行います。
ティーザー作成・配布
クライアントから売却案件のマンデートが取れたら、プロセスの始めに買手候補に配布するティーザーを作成します。ティーザーとは、1枚から数枚にわたる売却対象の事業もしくは企業の概要を記載した資料で、日本ではシンプルに1枚で作成され箇条書きで企業の概要を記載していることが多いです。
国内の中小型M&A案件では、文字情報を中心に対象会社の事業概要・財務・製品やサービス・強みが記載されていることが多いですが、海外が絡むクロスボーダー案件では、より魅力的な企業に見えるようにフォーマットや体裁にこだわって作成され、言語もすべて英語になっています。
このような資料を作成する際には、初期的な資料依頼リスト(Information Request List: IRL)をクライアントに送付し、短いタイムラインの中で準備をお願いすることになりますが、ともに会社を売却するという目標に向けて頑張ることになります。
インフォメーションメモランダム
ティーザーを見た買手候補が、売却対象の事業や企業に関心を持つ旨の返事があった場合は、改めて売主と買手候補者間でNDA(Non-Disclosure Agreement, 秘密保持契約書。CA:Confidential Agreementというケースもある)を締結します。
NDAを締結後は、売り手側のアドバイザーが作成したインフォメーションメモランダム(Information Memorandum: IM. Confidential Information Memorandum: CIMという場合もあります)という、ティーザーよりも詳細に売却対象の事業のビジネス・財務等が書かれている資料を買手候補者に配布することになります。
また、インフォメーションメモランダムの送付と同時に、売手側のアドバイザーからプロセスレターを送ります。プロセスレターとは、その名の通り、M&Aディールのプロセス(意向表明書の提出期限や宛先等)が記載された書類になります。
初期的QA対応
インフォメーションメモランダムを受領した買手候補者は、そこに記載されている情報をもとにビジネス・財務等に関して初期的なQ&Aを作成し、アドバイザー経由で売主により回答を希望する場合があります。
こういう場合は、まずアドバイザー側で回答ドラフトを作成し、売主の了承を得てから買手候補に送ることになります。またQA以外にも買手候補者と簡単なCall(電話会議)が行われることも多いです。
セルサイドDD
セルサイドDDは、別名ベンダーデューデリジェンス (Vendor Due Diligence:VDD)とも呼ばれます。これは売却対象の事業に関するデューディリジェンスレポートを予め売り手側で用意するもので、欧米ではよく見られる実務です。
これは売手側でDDレポートを開示することにより、買手候補者からのDDを行われる際の負担を軽減できますが実際に買手がDDに進むと新たな論点や事業計画や正常収益力の問題等、様々な質問が上がってくるので、結局マネジメントは一定の負担があるのは否定できません。
IM作成時にVDDレポートを参考にすることは当然あり、財務・ビジネスのVDDレポートと整合性があるように作成する必要があります。
入札を実施して会社売却を行う
意向表明書の受領後、デューディリジェンス、2次入札を経て売却が行われます。
意向表明書(1次入札)受領
買手候補者はインフォメーションメモランダムに記載された情報をもとに、自社とのシナジー(ファンドであればバリューアップの余地)を検討しバリュエーションを含め、期日に意向表明書を売手側アドバイザーに提出します。
1次入札の時点では、意向表明書には法的拘束力はなくNon-binding Offer(NBO)と呼ばれ売手側アドバイザーは、受領した意向表明書をもとにOffer summaryと呼ばれる資料を作成し、クライアントである売主にとって各入札者のofferの内容(バリュエーションや対価など各種条件を含む)を比較できるような資料を作成します。
デューディリジェンス・マネジメントプレゼンテーション(DD・MP)
1次入札を経て、売り主とアドバイザーのディスカッションをもとに、ディールの次のプロセスへ進む買手候補が決定されます。
この場合、売り手側のアドバイザー側から買手候補に次のプロセスに進める旨の連絡がなされます。なお、次のプロセスとはデューデリジェンスおよびマネジメントプレゼンテーションになります。マネジメントプレゼンテーションとは、売却対象の事業の経営者が自社の事業について、買手候補に対しに対しプレゼンテーションを行うことを言い、ホテルの広い部屋を貸し切ってやることもあり、当日のロジは重要なポイントになります。
買手によるデューデリジェンスに先立ち、売手側のアドバイザーは、Virtual Data Room (VDR)という、オンラインのデータフォルダに、売手側が買手に開示する資料を保存していきます。
買手に開示する資料は、そのまま資料をアップロードすることはなく、個人名や重要な顧客名は墨消し(Redactionという)したり、取締役会の議事録等に重要な顧客や情報で開示したくないものがある場合は、(特に買手候補に競合他社がいる場合)事前にクライアントと話し、対応方針を決めます。
2次入札・SPA(株式譲渡契約書)
デューデリジェンスが佳境に達すると、次はSPA(Share Purchase Agreement: 株式譲渡契約書)が重要になってきます。SPAのドラフトは売手側から提示され、それをベースに買手候補先がマークアップを入れます。SPAの署名(サイニング)に至るまでは、契約書の文言について売り手および買手からマークアップが入り、交渉が続きます。
案件によって重要になる論点は様々だが、価格以外にもチェンジオブコントロール・Indemnity(補償)・表明保証といった点が重要になることが多いです。
売り手が希望する価格に達しない場合、(特に非上場の創業者が株主の場合は)アーンアウトといって、対価を段階的に支払うアプローチをとられることがあります。アーンアウトの達成条件は案件に寄りけりだが、EBITDAが一定の数値を超える、事業計画の財務数値を達成する等があります。価格交渉では運転資本増減やネットデットが、価格に影響する重要な財務項目として論点になる。これらは主に財務DDでの検出事項を用いて検討することになります。価格調整の方法にはクロージング・アカウント方式と、ロックドボックス方式の2つがあり、前者はディール実行日の貸借対照表に基づき価格調整を行います。一方でロックドボックス方式は、クロージング日よりも前に基準を定め価格調整を行わない方式です。
ロックドボックス方式は、欧米のプライベートエクイティファンドでよく見られ、特にリターンを確定させたいファンド側には用いやすい価格調整方式です。
資産の譲渡取引である場合はAsset Purchase Agreement(APA)が締結される。このような案件では従業員の引継ぎや顧客リストが重要な論点になることが多くなります。
SPA/APAの交渉では、弁護士・クライアントの法務と協働しながら、落としどころを見つけていくことになり、ここはM&Aの仲介のプロフェッショナルの腕の見せ所です。
会社売却の完了(クロージング)
SPAのサイニング後、株券の譲渡と、対価の支払い完了を確認してクロージングになります。対価の支払いは中小規模のM&Aでは数千万円から数十億円の規模になることが多く、銀行を通じて対価がキャッシュで支払われることになります。
会社売却までは多くの時間を要し、書類の作成にも手間がかかります。ジャストM&Aでは、M&Aに関するご相談を完全無料で手続きをしております。仲介にかかる手数料が完全無料ですので、ぜひ一度ご相談ください。