中小企業の働き方改革や深刻な人手不足といった課題に直面し、生産性向上が強く求められるようになりました。実情を把握し、国が補助金を制度化して、中小企業の生産性向上による取り組みを支援する働きの代表例が「ものづくり補助金」です。
今回は、ぜひ活用したいものづくり補助金の主な概要・枠を解説します。
ものづくり助成金とは
ものづくり補助金とは「ものづくり、商業、サービス生産性向上促進補助金」の略称です。生産性向上を実現するための革新的なサービスの開発、生産プロセスの改善などのための設備投資等をサポートする目的。
ものづくりは製造業だけでなく、業種に関係なく生産性向上につながる設備の導入であれば、補助対象になります。
補助対象経費
本事業の対象として明確に区分することができるものであり、その経費の必要性及び金額の妥当性を証拠書類によって明確に確認できるものです。
機械装置・ システム構築費 | 機械・装置、工具・器具の購入、制作、借用に要する経費 専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に関する経費 改良・修繕または据付けに要する経費 |
外注費 | 新製品・サービスの開発に必要な加工や設計、デザイン、検査などの一部を外注(請負、委託など)する場合の経費 |
運搬費 | 運搬料、宅配・郵送料などに要する経費 |
技術導入費 | 知的財産権などの導入に要する経費 |
知的財産権等関連経費 | 特許権などの知的財産権などの取得に要する、弁理士の手続き代行費用など |
専門家経費 | 本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費 |
クラウドサービス利用費 | クラウドサービスの利用に関する経費 |
原材料費 | 試作品の開発に必要な原材料および副資材の購入に関する経費 |
低感染リスク型ビジネス枠の補助対象:詳細 | 一般型の補助対象に加え、広告宣伝費や販売促進費も補助対象となります。たとえば広告制作やセミナー開催、市場調査や営業代行に関する経費なども対象です |
グローバル型の補助対象:詳細 | グローバル型は一般型に加えて「海外旅費」も補助対象となります |
ものづくり補助金の概要
中小企業・小規模事業者で、資本金や従業員などから補助対象者が判断されます。
対象者
補助の対象となる中小企業者は、資本金または従業員数(常勤が)以下となる会社または個人です。
業種・組織形態 | 資本金 | 従業員(常勤) |
製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業 (ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業 (自動車または航空機用タイヤ、チューブ製造業、工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
ソフトウェア業、または情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人 |
補助金上額
応募枠 | 従業員人数 | 補助金上限額 | 補助率 |
通常枠 | 5人以下 | 750万円 | 原則1/2 |
回復型賃上げ・ 雇用拡大枠(新設) | 6~20人 | 1,000万円 | 2/3 |
デジタル枠(新設) | 21人以下 | 1,250万円 | 2/3 |
グリーン枠(新設) | 5人以下 6~20人 21人以上 | 1,000万円 1,500万円 2,000万円 | 2/3 |
補助率は原則1/2ですが、従業員5名以下(一部業種は20名以下)の小規模事業者であれば補助率は2/3となります。
「ものづくり補助金」一般型4つの応募枠
4つの応募枠を紹介します。
- 通常枠
- 回復賃上げ・雇用拡大枠
- デジタル枠
- グリーン枠
通常枠
従来からある通常枠です。確信的な製品・サービス開発または生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資などの投資経費が対象で、以下の基本要件を満たす3~5年の事業計画を策定している必要があります。
【ものづくり補助金基本要件】
- 事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加すること
- 給与支給総額を年率平均1.5%以上で増加すること
- 事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にすること
※3~5年後に、給与支給総額と事業場内最低賃金の要約を満たせなければ、補助金の返還が求められます。
回復型賃上げ・雇用拡大枠
2022年度に新設された回復型賃上げ・雇用拡大枠。ものづくり補助金基本要件に加えて、なんと課税所得がゼロであることです。課税所得がゼロ(赤字決済)であることが要件となる、補助金枠といえるでしょう。
目的としては、赤字事業の救済ではなく、あくまで賃上げと雇用の維持拡大です。そのため、他の応募枠と同様、以下の要件を満たさなければ、補助金全額を返金しなければいけません。
【ものづくり補助金基本要件】
- 給与支給総額を年率平均1.5%以上増加すること
- 業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にすること
デジタル枠
回復型賃上げ・雇用拡大枠と同じく、2022年に新設されたデジタル枠です。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)に資する革新的な製品・サービスの開発やデジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善などを行う事業者が対象となります。
グリーン枠
グリーン枠は温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービスの開発や炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供方法を改善する事業者が対象。他の枠より補助金上限額が最高2,000万円と高くなっています。応募要約は以下の通りです。
- 3~5年の事業計画期間内に、事業場単位での炭素生産性を年率平均1%以上増加すること
- これまでの温室効果ガス排出削減に向けた詳細な取り組み状況がわかる書面を提出すること
まとめ
2022年度のものづくり補助金の概要について説明しました。ものづくり補助金は手厚い補助金が受けられるので、ポイントをおさえて検討してみてはいかがでしょうか。