職場内でおこるモラハラは、被害者となった従業員にメンタルの不調や重大な問題を起こす可能性があります。ハラスメントは、企業全体に悪影響と損害をもたらします。従業員から相談があった際に、公正に対処できるようにモラハラの特徴を抑えておきましょう。
職場におけるモラハラとは
モラハラとはフランスの精神科医マリー・フランス・イルゴイエンヌ氏が提唱した言葉で、5つの特徴をあげています。
- 精神的な誹謗中傷
- 身体的な暴力はない
- 周囲にわかりにくい形で行為が行われる
- 加害者は被害者以外への人当たりが良い
- 被害者は自分が悪いと思い込みやすい
暴力はなく周囲にわかりにくいのがモラハラの特徴です。そのため、被害者は精神的にじわじわと追い詰められてしまい、知らないうちに深い精神的ダメージを負ってしまうことも多くあります。
モラハラは、公然と人を侮辱した場合は「侮辱罪」に科せられることも。名誉棄損罪にも該当するケースもあり、より重い刑が科せられることもあります。
モラハラとパワハラの違い
パワハラは周囲が気づくほどの暴言や暴力などが目立ち、被害者も暴力を受けることではっきりとした理不尽さを感じます。
モラハラは肉体的な暴力ではなく、目には見えない精神的な暴力だからこそ、周囲が気づきづらい傾向にあります。被害者がモラハラを受けていると認識していないことも多く「自分が悪い」「気のせいかもしれない」と精神的に悩みを抱え込んでしまうことも特徴です。
そのため、周囲に相談することもなく1人で抱え込んでしまい、いつの間にか深いダメージを負ってしまうこともあります。
モラハラの特徴2つ
モラハラの特徴として、以下2つを紹介します。
- 精神的なダメージ
- 周囲にわかりにくい
精神的なダメージ
モラハラは、職場において業務の範囲を超えて相手に侮辱的な言葉を発し、深い精神的ダメージを与えるのが特徴です。
- 仕事上で重要な連絡をしない
- 仕事を回さない、逆にたくさんの仕事を押し付ける
- 業務を妨害する
- 無視をする
- 会社の飲み会に誘わない
- 私生活に対してダメ出しをする
- 休日に執拗に連絡をする
人間関係から切り離して孤立させることで、精神的な苦痛を与える行為です。また、職場はあくまで仕事をする場であり、私生活やプライバシーに深く立ち入るような言動は、ハラスメントになりかねません。
心の傷は目には見えないためどのぐらい傷ついて、深いのかが分からないことも多く理解することが容易ではありません。継続的にモラハラを受けていても周囲は気づきにくく、被害者が精神疾患におちいることや最悪の場合、命を落としかねません。深刻な問題へ発展する前に対策を行うことが重要です。
周囲にわかりにくい
モラハラはパワハラと違い上下関係に関わらず行われています。加害者は被害者以外には人当たり良く接することも多いので、周囲にわかりにくいなどの理由があげられます。
被害者は「自分が悪い」「気のせいかもしれない」と悩み、誰にも相談できずに我慢していることも少なくありません。そのため従業員と定期的な面談を行い、会社での悩みを聞くことが大切です。
また、加害者はハラスメントをしているという自覚がないケースも多く、気分によって暴言を吐いてしまう、細かいことが気になって口調が荒くなる場合も。加害者は、被害者に問題があると自分を正当化していることもあるので、ハラスメントに関する研修を行うなどして自覚を促す場を設けることも必要になります。
モラハラを受けたときの対処法
ハラスメントの予防を行っても、モラハラが起こってしまったときはどうしたらいいのか。モラハラをする人の共通点として、以下があげられます。
- 自分が優位に立たないと気が済まない
- 自分だけが正しいと考えている
- 短気でイライラしていると態度や顔に出る
会社内でモラハラの相談をされた場合、重要になってくるのは被害に遭っているところを見かけた第三者の証言です。
双方の話の食い違いや裁判となった時には、証拠が必要になってきます。被害者や第三者には以下の証拠があるか確認し、残しておくようにしましょう。
- モラハラの被害を受けているところを録画、録音したもの(メールなど)。
- モラハラ被害の内容を詳しく記録したもの
- モラハラ被害に遭っているところを見かけた第三者(同僚など)による証言
- モラハラ被害によって発症したうつ病、適応障害など医師の診断書
厚生労働省では、「ハラスメント悩み相談室」を相談無料で設けています。電話相談だけではなく、メールやSNSでの相談も可能です。職場におけるハラスメントのことで悩んでいる、困ったときにはぜひそちらも利用してみてください。
まとめ
会社が1人ひとりの行動や悩みを把握するのは難しいことですが、いつでも相談できる窓口を設置しておくことが重要になってきます。1人で悩み、問題が深刻になる前に会社でどういう対応ができるかを従業員全員に周知し、理解してもらいましょう。モラハラだけでなく仕事上での悩みを相談できる窓口があれば、安心して従業員も働くことができるでしょう。