業務提携はM&Aと似た要素も持っていますが、経営権が取得できるかなど重要な要素が異なっています。また、業務提携にはメリットも多く存在しますが、注意すべき点も存在します。そこで今回は、業務提携とM&Aの違いやメリット・デメリットを解説していきます。
業務提携とは
業務提携とは、会社同士の資本移動が発生しない提携のことです。会社が共同で事業を行い両者の資金や技術、人材などの経営資源を提供・共有し合うことで、シナジーを得て事業競争力を強化することが目的です。
業務提携の具体例としては、新規事業への進出や販売力の強化、技術力の強化、技術分野の共同開発、生産力の強化などがあります。業務提携の種類としては、主に以下のパターンがあります。
技術提携 | ・ライセンス契約の ・共同開発契約などで双方の技術を利用する |
生産提携 | ・製造委託契約を結んで製品を生産する |
販売提携 | ・販売店契約 ・代理店契約 ・OEM契約 などを結んで商品を販売する |
その他 | ・仕入提携、調達提携などを結ぶ |
技術提携
まず、技術提携は提携先の会社が持っている技術資源を自社の製造や販売に活用する手段と言えます。契約としては特許のライセンス契約や新技術・新製品の共同研究開発契約などが代表的事例です。例えば、ライセンス契約知的財産権の保持者が、ライセンスの許諾を受けた者に対して、自由に使用することを許諾する契約を結ぶ事例などが挙げられます。
生産提携
次に生産提携についてですが、これは相手方に対して製造工程の一部を委託し、商品の生産能力を増大させるものです。契約形態は主に製造委託契約となります。
生産提携では品質管理やトラブルが生じたときの責任問題が懸念されます。事前に書面で契約内容を合意し、双方が支払遅延、不当な返品などで不利益を被ることがないよう注意する必要があります。また、OEM契約が結ばれることもあります。
販売提携
販売提携は、相手の会社が持っている販売資源を活用する方法です。販売資源とは、ブランドや販売チャネル、販売スキルを持った人材などで、これらを活用することでより事業の拡大が狙えます。他社の販売資源を活用するには、販売店契約、代理店契約をする場合もありますが、他社のブランドなど信用を活用したい場合はOEM、フランチャイズによる販売ノウハウの提供なども検討できます。
業務提携とM&Aの違いとは
業務提携とM&A(資本提携)は似ているところもありますが、大きな違いもあります。ここでは、M&Aの概要、業務提携とM&Aの違いについて解説していきます。
M&Aとは
M&A(資本提携)とは、協議では経営権を取得しない範囲で相手の企業の株式を保有し、出資することで経営上の協力関係を築く手法です。M&Aは一方の企業だけが株式を持つことが一般的ですが、両者で持ち合うケースもあります。M&Aは法律によって定義された概念ではなく、広義には株式譲渡や株式交換、株式移転など経営権を取得する意味合いも含まれています。
M&Aにおいては、会社は資本を強化し与信を高めたり、両者の業務上の支援を行うことで体制を強化することが主な目的となります。資本を提供する場合、互いに強固な関係が構築できるため、長期的・戦略的な提携を望む場合にはM&Aが用いられます。
また、経営に影響を与えないためには、1/3未満の株式比率までしか株を保有しないことで、特殊決議が必要な議案に対しても単独で否決できないように考慮します。
業務提携とM&Aの違い
業務提携と資本提携(M&A)は、双方の経営資源を共有して事業を支える点では共通していますが、相手方の事業や会社への支配権(経営権)取得を求めるかどうかという点で大きく異なっています。業務提携では、資本提携(M&A)と異なり、相手の会社の株式や経営の取得をする目的はありません。従って、業務提携は緩やかでフレキシブルな協力関係を構築することが可能になります。
要約すると、資本提携(M&A)が相手の会社の経営資源を自社で取得・支配下に置くことが目的となるのに対して、事業提携はあくまで経営資源を他社のものとして残したまま、自社でも利用できるように資源の交換ができる関係を構築することなのです。
業務提携のメリット・デメリット
業務提携にはメリット・デメリットがあります。それぞれ詳しく解説していきます。
業務提携のメリット
業務提携のメリットは以下の4つが考えられます。
比較的緩やかな協力関係
業務提携では互いに会社は消滅せず、ある事業分野に特化した協力関係を構築するだけです。そのため、必要最低限の規約などで関係の構築が可能です。また、業務提携には法的拘束力がありません。そのため、提携内容や契約内容も当事者間で決定できるという裁量上のメリットもあります。
さらに、業務提携では、協力関係を終了することも簡単にできます。会社同士が対等な関係でシナジーを生み出せる点が業務提携のメリットと言えます。
自社の独自性が存続する
業務提携は会社同士を統合するわけではなく、あくまでの会社の利益向上のための協力関係が構築されるだけです。特定事業の一部をシェアするだけのため、特定の事業分野以外については、当然自社の独自性を残すことができ、会社の自立性が脅かされるリスクはありません。
会社のアイデンティティを存続させることができる点が、業務提携の大きなメリットです。
提携は低コストで可能
業務提携は短時間、低コストで行うことができるため、互いの会社のリソースをそれほど必要としません。
買収や合併の場合は、相手企業との話し合いを頻繁に行い、複数の契約を締結させてから統合します。買収や合併では多くの資金と諸経費が必要になるため、会社が支払うコストも多くなります。対照的に、業務提携では会社単位での動きはそれほど必要なく、特定の事業分野だけが提携します。そのため、他のM&A手法よりも大幅に手続きコストがかからないのです。
低リスクでの協力関係を実現
業務提携の大きなメリットのひとつは、協力関係を築くリスクが低いことです。M&Aには大きなリスクがあり、合併する企業の組織の再生、経営上の問題を解決するために、多くの資金や時間をかけて利益を生み出さなければなりません。
M&Aは大きなリターンが期待できる反面、利益が出なければ失った資金や時間が多きな損失となってしまいます。一方、業務提携は見込みのある利益に対して、経営上の課題などとは別にあまり関係なく低いリスクで利益を見込むことができます。たとえ業務提携が失敗に終わっても、損失はM&Aに比べてかなり低く抑えることができます。
業務提携の手続きは、M&Aと同じくM&A仲介会社を利用することをおすすめします。まずはジャストM&Aにご相談ください。
業務提携のデメリット
業務提携簡素な手続きであるがため、契約も曖昧になってしまう恐れがあります。業務提携の合意が曖昧なままであると、後に利益配分でトラブルになるケースもあります。
そのため、提携先の企業の信頼度はしっかり調査しておく必要があります。これを「デューデリジェンス」と呼び、業務提携先の際に企業価値を適切に判定する手続きという意味があります。
デューデリジェンスでは、決算状況、財務、法務、税務などのあらゆる会社情報から提携すべきかどうかチェックします。さらに、情報流出のリスクも考慮する必要があります。
業務提携は終了後のリスクも考慮しておくことが重要です。なぜなら、提携終了後に勝手に自社の技術やノウハウが使用されるリスクがあるからです。そのようなリスクを減らすためにも、契約時に互いの情報開示に関する契約を締結する必要があります。
業務提携のデメリットも考慮して実行する
業務提携はコストを抑えて特定分野のみの協力関係を築くことで、事業の拡大を狙うことができる戦略です。業務提携は資本の移動は伴わず、会社を存続させたまま行うことができるメリットがありますが、一方で利益の配分や提携終了後の技術の取扱いなどについて考慮すべき点もあります。これらのデメリットも理解して提携先を調査する必要があるでしょう。
ジャストM&Aでは、M&Aや業務提携のご相談を完全無料で手続きをしております。仲介にかかる手数料が完全無料ですので、ぜひ一度ご相談ください。