M&Aと一口に言っても、その手法は数多く存在し、大きく9つに分けられますそれぞれの手法に特徴やメリット・デメリットがあるため、これらを理解することで適切な手法を選択できます。
M&Aの手法は、目的や企業の状況などによって最適な手法が変わります。この記事では、M&Aの手法とそれぞれの手法の特徴、メリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
なぜM&Aをするのか
M&Aは、「Mergers(合併)」と「Acquisition(買収)」頭文字を取ったもので、企業による一つ、あるいは複数の企業との合併や買収による統合のことを言います。しかし、M&Aの手法は、合併と買収だけとは限りません。多くの手法が存在しているため、環境に合った手法を探すことが重要です。
M&Aの目的
M&Aにおける主な目的は、自社と対象企業の強みを生かし、シナジー効果を引き出すことです。両企業のリソースを合わせて良い面を引き出すことで、経済的効果を最大限得ることができます。M&Aにおける細かい目的には、以下のとおりさまざまです。
- 事業規模の拡大
- 新規事業への参入
- 優秀な人材やリソースの獲得
- 事業承継問題を解決する手段
M&A市場の動向
現在のM&Aの市場は、企業の事業承継問題を解決するために中小企業がM&Aをすることが多くなっています。経営者や労働者の高齢化が進んでいること、労働者人口の減少、そしてM&Aが後継者問題を解決するための手法として認知、定着してきたことから、事業承継問題解決が目的のM&Aは増加傾向にあります。
また、日本国内の企業が海外企業を買収するケースが増加していることも特徴の一つです。国内の企業と海外の企業がM&Aをすることを、「クロスボーダーM&A」呼び、国内企業による海外企業の買収を「IN-OUT」呼びます。
IN-OUTが増加している理由は、日本国内の経済状態が停滞・縮小傾向であることが主な原因と考えられます。
M&Aができる9つの手法
ここからは、M&Aができる9つの手法について解説します。9つの手法は以下の順番で紹介します。
- 合併
- 買収
- 合弁会社設立
- 資本参加
- 生産提携
- 販売提携
- 技術提携
- 新設分割
- 吸収分割
M&A手法① 合併
合併とは、その名の通り2つまたはそれ以上の会社が、1つの組織に統合されることを言います。合併には「吸収合併」と「新設合併」があります。合併を行うメリットは主に3つです。
1つ目は、後述する買収とは違い、合併のタイミングで資金を準備する必要がないことです。2つ目は、合併により企業の事業規模が拡大することにより、経済的効果を得られる期待ができることです。3つ目は、権利や取引先との契約などの関係を、合併後もスムーズに存続させて会社が引き継げることです。
合併によるM&Aのデメリットは、契約関係が引き継がれるため、帳簿に記載されていなかった債務があっても引き継がなければならないリスクがあることや、2つ以上の会社の株主が混在することで内部の経営戦略に齟齬が生じる可能性があることです。
M&A手法② 買収
買収とは、1つの会社が、1つあるいは複数の会社を買収することで統合する手法です。買収にはいくつかの分類が可能です。
- 株式譲渡
- 株式交換
- 第三者割当増資
- 事業譲渡
- 会社分割
- TOB
- MBO
買収によりM&Aを行うメリットは、人材、社内の資源などを手間をかけずに入手できる点、買収により新規事業、新たな市場への参入ハードルが下がることなどがあげられます。
一方、買収によりM&Aを行うデメリットは、買収後の帳簿に記載されていない、いわゆる「隠れた債務」が見つかった場合に負うリスクと、M&A最終契約書締結の後に行われるPMIが思うように進まず、企業の統合が不十分になるというリスクがある点です。売り手側の視点では、想定よりも算定された企業の買収金額が低くなってしまうリスクがあります。
M&A手法③ 合弁会社設立
合弁会社設立は、日本国内と海外の資本が協力して出資を行い新たに会社を設立することです。一般的には「ジョイントベンチャー」とも呼ばれます。合弁会社を設立するメリットは、協力して出資をするために出資のリスクを低くすることができる点、合弁を行う企業の人材や設備を活用できる点、現地の人たちからの反発を抑え、訴訟リスクを避けることができる点などにあります。
M&A手法④ 資本参加
資本参加は、強い関係を築きたい企業の株式を取得し、協力関係を結ぶ手法のことです。資本参加は、合併や買収のように、会社の形態が変わることはありません。そのため、株式を取得するときも、相手の企業の経営支配権に影響が出ない程度に株の取得を行います。
資本参加によるM&Aのメリットとしては、資本参加をした企業と新規事業を展開できること、相手企業が株式を取得してくれることで株式向上が期待できること、販売ルートの拡大などがあげられます。
ただし、資本参加によるM&Aは、永続的な関係ではなく、相手企業との関係をどう継続するかを考えなければなりません。
M&A手法⑤ 生産提携
生産提携は、生産分野のみの提携を言います。ニーズがあっても生産が間に合わない場合などに活用されます。委託と異なり、生産に関してお互いに協力する関係になります。
生産提携によってM&Aをすると、商品に関する技術面での協力はないため、技術面の情報流出が防げる点、生産量が向上する点などにメリットがあります。
一方で、生産提携でM&Aをすると、生産量と利益の分配割合について齟齬が生じ、トラブルになるリスクがある点はデメリットです。
M&A手法⑥ 販売提携
販売提携とは、販売分野でのみ提携する手法です。自社商品の販売時に、自社がもつ販売ルートや扱っている店舗だけでなく、販売提携した企業がもつ販売ルートや店舗も活用できる点に大きなメリットがあります。
販売提携でM&Aをするデメリットは、生産提携と同様、相手企業の販売ルートから発生した収益の分配方法について検討が必要な点です。
M&A手法⑦ 技術提携
技術提携とは、技術分野に関する提携のことです。商品やサービスの開発時に、自社だけでなく業務提携先の技術も活用することで、より良い商品やサービスを開発することができるようになります。
技術提携でM&Aをするデメリットは、自社と提携先企業が共同で開発をするため、自社技術が流出するリスクが発生することです。
M&A手法⑧ 新設分割
新設分割とは、新しく会社を分割して特定の事業を行うことで、もとの企業の事業とは切り離す手法です。
新設分割は、新設分割の際に対価として株式を使うことが可能なため、現金を準備する必要ないこと、分割する任意の事業を選べることなどがメリットです。
新設分割によるM&Aのデメリットは、分割した事業を受け継ぐときに、債権も一緒に受け継いでしまうリスクがある点、手続きが煩雑でコストがかかる点などです。
M&A手法⑨ 吸収分割
吸収分割は、自社の中で分割する事業が、すでに事業展開をしている企業に吸収されて分割される手法のことです。
吸収分割によるM&Aは、新設分割と同様、分割時の支払いは現金以外に株式でも対応可能なため、資金を準備する必要がないこと、分割する任意の事業を選べることなどがメリットです。
一方で、吸収分割によるM&Aのデメリットは、不要な債権なども自社で引き継いでしまうリスクがあることです。
M&A・事業承継の手法は専門家に相談
これまで見てきたように、M&Aによる事業承継は多くの手法があり、メリットやデメリットが異なります。
また、手法によっては現金の資金を必要としないこともあるため、自社の資金繰りも考慮しながら適切な手法を選ぶ必要があります。
M&Aは手法の決定やその後の手続きに多くの時間を要するため、知識や実績のある専門家に相談することをおすすめします。ジャストM&Aでは、M&Aに関するご相談を完全無料で手続きをしております。仲介にかかる手数料が完全無料ですので、ぜひ一度ご相談ください。