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    M&Aに関する情報発信 COLUMN

    譲渡益とは?その会計処理方法や注意点を解説

    2020/11/25

    M&A基礎知識

    今回は譲渡益ついての記事になります。譲渡益はM&Aの取引の際に必ず出てくる論点・項目ではありますが、会計上の処理や税務上の処理、会社を売却する際に、税金によるキャッシュアウトを避けるために考慮しなければならない点です。ここでは基本的な用語や会計処理、税務上の取り扱いなどを解説します。

    譲渡益とは

    譲渡益の定義について確認していきたいと思います。譲渡益(もしくは譲渡損)とは、資産を第3者に売却・譲渡した際に生じる損益のことで、売却・譲渡した際の実際の対価と、売却・譲渡した資産の帳簿価額との差額により計算されます。

    譲渡益は会計上はPLに計上され、税務上は譲渡益は課税対象になります。詳細は以下に書いていきますが、M&Aのような資産の移動を伴う取引においても譲渡益は必ず出てくる項目になりますので、この機会に頭に入れておくと、実際のディールの交渉や株式譲渡の際の税金の留意点など、弁護士・会計士・M&A仲介のアドバイザーとコミュニケーションを進めながら検討することができるので売り手の経営者にとっても重要な論点になります。

    会計処理

    まず、譲渡益(または譲渡損)の会計上の処理について確認していきます。会計上は以下のような仕訳になります。いかのような設例を考えてみましょう。

    ある会社の経営者Aは自社の売却に伴い、保有株式を買手であるBに対し、5百万円で売却しました。保有株式の帳簿価額は3百万です。

    <会計上の仕訳>

    現金5百万円 / 株式 3百万円

             譲渡益2百万円

    一方で、譲渡損が出る場合の会計処理の例を見てみましょう。

    ある会社の経営者Aは自社の売却に伴い、保有株式を買手であるBに対し、2百万円で売却した。保有株式の帳簿価額は3百万である

    現金2百万円  / 株式 3百万円

    譲渡損1百万円

    このように、帳簿価額より自社の株式を高く売却した場合は、譲渡益が損益計算書に計上されます。株式の譲渡益は、損益計算書では営業外収益の項目に計上します。なお、有価証券の譲渡損益は、原則として「約定日基準」といって、当該株式譲渡にかかる契約を締結した日に計上します。そして約定日が属する事業年度の損益計算書に計上されます。なお、会計上は引渡日基準といって、有価証券(株式)を引き渡した日に譲渡損益を計上する実務もあります。

    なお、上記の取引では株式の売買において発生する手数料等は無視していますが、実際は取引に伴い発生する手数料は発生時の費用として一時に費用処理され損益計算書に計上されます。手数料の具体例としては、株式等の譲渡のために要した委託手数料(消費税を含みます。)などや、譲渡した株式等の取得のための借入金等の利子で、本年中の所有期間に対応する部分の金額、株式売買を内容とする投資一任契約に基づいて支払う固定報酬及び成功報酬(この場合はM&Aの仲介のプロフェッショナルやアドバイザリー会社に支払う、アドバイザリー手数料が該当します)が、国税庁が定める、「株式等の譲渡に要した費用等」に該当します。

    税務上の関係で見ると、譲渡損が生じた場合は特段課税に関して検討する必要はないですが、譲渡益が生じている場合は、税務上の関係を検討する必要があり、実際に税務上sどのような処理がなされているかは、税理士に任せきりにせず、売却する側の経営者もある程度概要を頭に入れておくことが重要です。

    以下で、税務上の処理について詳しく書いていきます。

    税務上の検討事項

    つぎに、株式や資産の譲渡益に関して最も重要な関心事である、税務上の検討事項、取り扱いについて書いていきます。

    ここでは、株式の譲渡主体が個人なのか、法人なのか、という点について分けて書いていきます。

    <個人の場合>

    株式の売却益は譲渡所得に該当し、申告分離課税方式により、所得税が課される。売却益は譲渡金額と、取得原価と譲渡経費の合計の差額で計算される。株式の取得原価については、概算取得費として、譲渡金額の5%とみなすことができ、譲渡所得は他の株式譲渡損失と通算することができる

    <法人の場合>

    株式の売却益は、総合課税方式により、他の法人所得同様に法人税が課税される。売却益は譲渡金額と、取得原価と譲渡経費の合計の差額で計算される。概算取得費の適用もなく、法人税法が根拠条文なので損益通算の考え方もない。なお、法人の課税所得の金額により、適用される税率が変わることに留意し、詳細は税理士に確認する必要がある。

    なお、譲渡価額についてはM&Aのように独立の第3者間で成立した価額あれば、税務上は基本的に問題はないものの、当該譲渡価額が財産評価基本通達等に基づき算定された時価と著しく乖離している場合は買手側の法人で受贈益計上や寄付金認定の問題が生じたり、売り手側にとっても時価で譲渡したとみなされて所得が計算されるなど、税金が思ったよりも多く発生する可能性があるので、留意する必要があります。

    個人と法人に分けて説明すると、以下のようになります

    <個人の場合>

    • 譲渡価額が時価より著しく低い場合は、時価により譲渡したとみなして譲渡所得が計算される
    • 譲渡価額が時価より著しく高い場合は、譲渡価格と時価の差額は、一時所得として課税され、残りの売却益は申告分離課税により20%が課税される

    <法人の場合>

    • 譲渡価額が時価より著しく低い場合は、譲渡価額と時価の差額が寄付金と認定され、法人税の所得計算上、一部損金不算入となる可能性がある点に注意
    • 譲渡価額が時価より著しく高い場合は、譲渡価額と時価の差額が受贈益として課税される

    なお、個人株主で重要になる、譲渡益にかかる税金について、株式譲渡にかかる税金は先ほど申し上げたように、申告分離課税の対象になっており、年間の譲渡益に対して所得税15%、住民税5%の20%に、2.1%の復興特別所得税が課されることになります。

    M&Aでの検討事項

    一般に、現金対価による株式譲渡で完結するM&Aは取引額が数千万円から数十億円の比較的中規模もしくは小規模のディールになることが多いです。

    このようなディールでは、買手は安く買いたい一方で、売り手は高く売り抜けたいという相反する意思があります。しかしながら実際は、買手は色々な手法で企業価値評価を行い、簿価よりも高い企業価値(バリュエーション)がされることが多いので、後は事業価値から純有利子負債を控除した株式価値が、自分の懐に入ってくる金額になります。基本的に、よほどのことがなければ、譲渡価額は株式の帳簿価額を下回ることが無いと思われますので、大抵の場合は譲渡益が発生するという認識で問題ないかと思われます。

    売り手として意識すること

    売り手としては、税務上のコストを最小限にしたいというインセンティブが働きますが、実際に相対でM&Aにより自社の株式を売却した場合は譲渡益課税による税金支払い負担が売り手に発生するので、税金を支払えるだけのキャッシュは手元に用意しておく必要があります。

    しかしながら、上記は日本の税法に基づく処理であり、香港などの海外では、資産譲渡益に対する課税が無いという特徴があります。そのため、自社をどこで営業している法人にするかというのは経営上、タックスマネジメントの観点から重要になりますので、将来的に会社を売却することを検討している経営者の方は、税理士やM&Aの仲介などのプロフェッショナルに相談しながら、自社にとってもっとも合理的かる有利な税務上の戦略・経営戦略を持つことが肝要になります。

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