事業承継の中で、最もよくあるのは親族内承継ではないでしょうか。家業を継ぐことになって親族内承継を検討することはよくあることです。今回は、親族内承継のメリット、デメリットを解説します。
親族内承継とは?
親族内承継とは、親族のなかで後継者を決めて事業承継をすることです。親族内承継を進める流れは、下のような流れとなります。
1、親族の中から後継者を選出する
2、後継者を育成する
3、事業承継する方法を決める
4、事業承継の準備をおこなう
5、取引先や社内に後継者を周知する
6、事業承継の手続きを進める
親族内承継のメリット
1、後継者に経験を積ませられる
子どもに承継するケースだと考えると、あらかじめ子ども自身が会社を引き継ぐことを前提として、働かせることができます。子どもに会社を任せられるまで、一般的には10年はかかると言われています。そのため、後継者として十分な教育機関を準備できるということは、事業承継が上手くいくと期待できます。
2、相続や贈与の活用
親族内承継をおこなうには、「相続」「生前贈与」によって資産を引き継ぐ方法が一般的です。後継者や現在の経営者の資産状況によって、どの承継方法が最も良いか、じっくり検討することができます。
どの方法を選択するにしても、課題は残ります。親族内承継を前提として、早い段階で後継者が決まっていれば、さまざまな承継方法を検討した上で、対策を練ることが可能です。
3、周囲の理解を得やすい
円滑に事業承継をおこなうには、周囲の理解が得やすいことも一番のポイントです。親族内承継なら、事前に従業員や取引先に後継者を紹介しておくことも可能です。関係者が納得しやすいのも親族内承継の良いところです。
周囲に説明し、後継者が承継する流れなどを理解してもらえれば、取引先や金融期間にも円滑に紹介することができます。
4、企業風土や企業文化が変わらない
第三者を社外から連れてくる社外承継など、いわゆるM&Aと言った手法だと、企業の文化がガラリと変わることもないとは言えません。親族内承継、特に子どもに引き継ぐ方法ですと、大きな変化は起きにくいことが多いと感じます。そのため従業員や取引先に理解を得るにあたって、親族内承継は有利と言えるでしょう。
親族内承継のデメリット
次に親族内承継のデメリットを考えてみます。
1、他の親族とのトラブル
親族の中から後継者を選ぶ場合、複数の後継者候補がいる場合があります。後継者の候補がいればいるほど、後継者同士争うリスクも高くなります。状況次第で、候補者同士の争いとなる可能性もあり、社内が分断されることもあるでしょう。
現在の経営者に相続人が多くいると、生前に対策を講じておかないと、死後、株式の相続がトラブルにつながる可能性があります。経営者以外に株式を保有している親族がいると、その親族の意向も考慮しないといけません。それがリスクとなります。
このように、親族内の候補者がいればいるほど、誰が候補者であるのか社内外にきちんと周知しておき、生前に相続対策をおこなっておくことがポイントです。
2、適任者の不在
現在の経営者がどれほど優れた人物であっても、親族である候補者が素質を持っているとは限りません。それが経営者の子どもであってもです。親族内承継は、親族内から後継者を指名します。そのため事業承継後に会社の経営状態が悪くなる可能性も存在します。
後継者として事業を継ぐにあたっての懸念事項はさまざまです。会社の存続を考えた上で、優れた経営者となる人物は誰なのか、後継者を誰にするのか、判断することは最も重要なこととなります。
3、大きく変えにくい
親族内承継の場合、後継者はこれまでの経営方針をなかなか大きく変えることができない場合が多いです。時代の流れに合わせて方針を大幅に変更したい思いはあっても、臨機応変に対応できず、これまでの方針にこだわりすぎて、経営が上手くいかないというケースもあります。
これまでの経営者が作り上げた歴史はあっても、これからの経営状況は大きく変わることもあります。後継者自身の経営をおこなうように進めていくのが大切です。
親族内承継をおこなう3つの注意すべきポイント
親族内承継にはメリットとデメリットがあります。これから親族内承継を進めていくにあたって、どのような点を注意すればよいのでしょうか。ここでは、親族内承継をおこなうにあたって3つの点を紹介します。
1、早めの準備と関係者への周知
後継者候補を決定したあと、後継者を時間をかけて育てます。その早い段階で、従業員や取引先などに周知をおこなって信頼関係を強めていくことが重要です。候補者が複数の場合は、周りの評価や本人の資質、経営に対する意欲などから後継者を1人に決める必要があります。
2、親族への配慮
後継者以外の親族への配慮は親族内承継には欠かせません。相続や贈与は金銭的な問題につながるので、相続対策は必須です。株式譲渡や相続、生前贈与に関してのスキームを検討。その上で遺産分割の方法を検討し、後継者以外の親族とのトラブルに発展しないか配慮する必要があります。
3、個人保証への対応
個人保証をそのままにしておかないための対策も必要です。現在の経営者が完済できるなら問題ないですが、借り入れが必要な場合、現在の経営者が退職する際の退職金を準備しておくことで、生前退職金の一部を活用できます。
まとめ
今回は、親族内承継のメリット、デメリットをそれぞれの点から検討してみました。ほかにも注意点がいくつもあるので、早い段階から準備しておいて、対策を練っておくのが賢明です。
事業承継は早め早めの対策が必要です。